『電影少女』は1992年に誕生した、恋愛・SF・成長ドラマが交差する珠玉の名作。
目次
概要
- あらすじ
恋に臆病な高校生・弄内洋太が、失恋後に入った怪しげなレンタルビデオ店で“ビデオガール・アイ”と出会う。故障したVHSの影響で愛は“感情を持つビデオガール”として飛び出し、洋太の恋と人生に介入する。彼女の存在とレンタル期間終了のタイムリミットが、胸を締めつけるドラマを生む。 - メディア展開
- OVA(1992年、全6話/Production I.G)
- 実写映画(1991年、東宝・錦戸亮主演)
- 実写ドラマ化:2018年『電影少女 Video Girl Ai』、2019年続編『…Mai』
- スピンオフ:『Video Girl Len』(1992年/全2巻)
- 魅力ポイント
- 桂正和の美麗イラスト:リアルとファンタジーの絶妙な融合
- “壊れたVCR”設定により、ビデオガールが人間性を獲得する:独特なSFロマン
- 青春の痛みと成長:恋の三角関係、初体験や喪失など“若さの葛藤”が等身大に描かれる
SFの仕掛けを通して“恋愛=人間になる試練”を描く本作は、読み返すほど深まる名作。映像化もされ、時代を超えた普遍的な魅力を放ち続けています。
まとめ
『電影少女』は、壊れたVHSから飛び出すビデオガールのアイと、恋に不器用な高校生・洋太の“ちょっと不格好で美しい”ラブストーリーです。
最初はギャグ寄りのコメディから始まるものの、物語が進むにつれて“初めての恋、友情、喪失、自立、という青いテーマが、鮮やかに胸を揺さぶります。
特に印象深いのは、ビデオガールのアイが人間として成長していく過程です。
テープの寿命が刻々と近づく中で、「ビデオガールなのに泣き、怒り、迷い、そして愛する」存在へと変わっていくその描写は、まるでピノッキオのような生命讃歌さえ感じさせます。
桂正和の描く“80~90年代のスクールライフ”と“SFガジェット”の融合も素晴らしく、レトロファッションやVCRのノイズまでもが物語に味を添えています。
絵の美しさもさることながら、洋太が大人になるにつれて服装も変化し、まさに“彼が大人になる”過程がヴィジュアル面でも伝わってきます。
一方、漫画としての完成度の高さに反して、モエミやタカシとの関係で「会話すれば済むのに!」とツッコミたくなるもどかしさは、逆に“青春あるある”として納得できます。
実際、「思春期にありがちな“言えないもどかしさ”をリアルに描いてる」と共感の声が。
全体を通して、これはただの恋愛SFではなく、“人間とは何か”を問いかける青春成長譚です。
アイがテープの寿命を超えて存在しようとするクライマックスは、読む者すべてに「愛とは?」を考えさせる余韻を残します。