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大阪の魂を感じる、泥臭くも温かい物語
10歳のチエは、小さな焼き鳥屋を手伝いながら、大人たちの騒がしい世界に立ち向かう。
ギャンブル好きな父・テツ、離れて暮らす母。
そして“河原のギャンブル屋”や猫同士のケンカ。
笑いだけではない、どこか“人間の匂い”がするリアルさです。
高畑監督は関西の下町で使われる関西弁、街の風景、人々のふるまいを、まるでカメラで録ったかのように映像化しています。
その描写は、まさに「社会派コメディ」とも言える奥深さ。
チエがボロボロになりながら強く前に進む姿に、胸が熱くなります。
特筆すべきは、焼き鳥屋の混沌とした空気と、そこに集まる個性豊かな人々。
彼女の“これが私の家族”という強い意志が、最後まで作品を支えています。
自分より大きな問題を抱えた父と母を前に、チエは一人で葛藤しながらも、“この場所を守る”と決意する。
その潔さが素晴らしい。
また、猫の喧嘩の描写はコミカルながら、人間関係の縮図のようでもあり、笑いと哀愁が同時に湧いてくる。
これまで見たアニメとは違い、「下町大阪の生活」、正に「人間くささ」が詰まった名作です。