「ミステリと言う勿れ」は、大学生・久能整(トトノウ)が巻き込まれる“哲学的ミステリー”を描いた話題作。

『ミステリと言う勿れ』は、他のどのミステリーとも異なる魅力を持つ作品です。
主人公・久能整(くのう ととのう)は、“探偵”ではなく、大学生。
しかも、事件を暴くために走り回るのではなく、淡々と「会話」だけで真実に迫ります。
そんな彼が登場するこの作品は、単なる謎解きではなく、“人間とは何か”を深く考えさせてくれる「哲学的ミステリー」。
この作品が連載開始されたのは2017年11月、作者は『BASARA』や『7SEEDS』で知られる田村由美先生。
初出の読み切り(2016年)で既に注目を集めており、今や単行本は15巻以上を数え、2023年には累計発行部数1800万部を突破。
2022年には菅田将暉主演で実写ドラマ化、2023年には映画化もされ、映像作品でも大ヒットしました。
印象深いのはそのストーリー展開。
たとえば第1話では、整がかつての同級生殺害の容疑者として警察に呼ばれますが、彼は持ち前の観察力と冷静な語りで、警察の思い込みと矛盾を一つ一つ論破していきます。
ただそれは、論理だけでなく、相手の心の奥にある葛藤や悲しみにまで踏み込む“優しい言葉”でもあるのです。
整のキャラクター造形も他に類を見ません。
アフロヘアで人付き合いが苦手そうに見えて、実は驚異的な記憶力と観察眼を持つ。
そして彼が使う“長い独白”は、哲学的でありながらも誰もが「そうかもしれない」と思わず頷いてしまう真実を含んでいます。
こうした魅力に惹かれたのは日本だけではありません。
海外の読者レビューでは「トトノウはセラピストのような存在」「論理と共感が両立する不思議な主人公」と評され、マンガファンの間でも高く評価されています。
また、実写ドラマ版では、整の語りが視聴者に響きやすいよう工夫されており、特に第1話の長台詞の再現度は見事です。
映像をきっかけに原作へと進むファンも多く、ドラマ・映画と連動したメディアミックスとしての完成度の高さも見逃せません。
その人気と評価は数々の賞にも現れており、2022年には小学館漫画賞一般部門を受賞。
その他マンガ大賞や手塚賞へのノミネートも多数あります。
『ミステリと言う勿れ』は、謎を解く物語でありながら、「なぜ人は争うのか」「本当の優しさとは何か」といった根本的な問いを投げかけてくる稀有な作品です。
読後は、心に静かな波紋が広がるような余韻が残り、きっともう一度誰かと語りたくなる作品です。